アレンジャー必見!ドミナントコードリハモテク4選

★この記事は、2019年アカペラアドベントカレンダー企画22日目の記事です。
※前回21日目の記事は長澤宏史(ヒロ)さんによる「発声を学んで世界が変わった話」でした。未読の方はこちらもぜひ!
 

自己紹介

みなさま初めまして、シャインと申します。
 
・東京理科大学VOICE TRAINING部
(twitter.com/VoitraClubNoda)
・アレンジャーの会
(twitter.com/arrangernokai)
に所属する大学四年生です(2019/12/22現在)。仲良くしてください。
 
今回は私がアレンジする際によく使う、お気に入りのドミナントコード(Ⅴ、Ⅴ7)のリハーモナイズ手法についてお話したいと思います!
(以下、この記事ではメジャーキーの場合を前提として話を進めます。)

「ドミナント」ってな~に?

…と言っても、「いやいや『ドミナントコード(Ⅴ、Ⅴ7)』って何ですのん!?!?!?」という声が聞こえてきそうですね。安心してください。穿いてますよ順を追って説明しますね。
 
ドミナントコードについてざっくり説明すると、そのキーのダイアトニックコードの内、主音をルートとするコードから昇順に数えて5番目のコード、といったところになるでしょうか[注1]。「ダイアトニックコード」というのは、ダイアトニックスケール[注2]の各音をルートとして、その上に3度の間隔で音を3つまたは4つ積み重ねて作られるコードのことです。
 
例としてCメジャーキーにおけるドミナントコードについて考えてみましょう。 下の図をご覧ください。
 
 
ドを主音とするメジャースケール、Cメジャースケールです。
 
Cメジャースケールを構成する7音「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」それぞれに対して、3度の間隔になるようにこれら7音の中から音を3つないし4つ積んでいくことでできる7つのコードが、Cメジャーキーのダイアトニックコードになります。
 
 
このダイアトニックコードの内、主音(ここではド)をルートとするコードから数えて5番目のコードがドミナントコードですから、CメジャーキーにおけるドミナントコードはGまたはG7ということになります。
 
実はこの7つのダイアトニックコード、キーが変わってもそれぞれメジャーやマイナーといったコードの種類は変わりません(積みの間隔はそのままに平行移動してるイメージなので、まあよく考えれば当たり前ですね)。なので、コード進行のアナライズの際には、主音をルートとするコードから順にローマ数字を振り、それぞれ「Ⅰ、Ⅱm、Ⅲm、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵm、Ⅶm(♭5)」及び「ⅠM7、Ⅱm7、Ⅲm7、ⅣM7、Ⅴ7、Ⅵm7、Ⅶm7(♭5)」と表記して、そのキーにおける役割を明らかにすることが多いです。もちろんドミナントはⅤ、Ⅴ7ですね。
 
以上、みなさまガッテンいただけましたでしょうか。
ここからが本題です。まだブラウザは閉じないようにお願いします!笑
 
[注1]「ドミナント」とは機能であり、本来こうした機械的な説明で終わってしまうのはあまりよろしくないかもしれませんが、ここを深掘りすることが本記事の主題ではないためここでは簡単な説明に留めました。
ドミナントの機能についてより詳しく知りたい方は、「主要三和音」「属和音」や「トライトーン」(アカペラグループの方ではないですよ)といったキーワードで色々と調べてみてください。
 
[注2]ダイアトニックスケール… 本記事ではメジャーキーの場合を想定しているので、メジャースケール(主音から順番に全音・全音・半音・全音・全音・全音(・半音)の間隔で音を並べることによって作られるスケール)のことだと思っていただければOKです。
マイナーキーやその他のチャーチモードの場合はそれに対応するスケールということになります。
 

ドミナントコードのリハモテク4選!

それではいよいよ、先ほどから長々と説明してきたドミナントコードについて、私のイチオシリハーモナイズ手法を一挙公開したいと思います!
例として、「Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ」という進行のⅤ7をリハーモナイズすることを考えてみましょう。Cメジャーキーであれば「Dm7→G7→C」のG7をリハモするということです。
(この後に出てくる音声ファイルは全てCメジャーキーの場合におけるコード進行です。適宜ボイシングを変えたり5度を省略したりしています。)
 
・Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ

其ノ壱:テンションノートを付加する

テンションは飾りのようなもので、これを加えても本質的なコードの役割が変わるわけではないので「リハーモナイズ」と言い切っていいものか微妙なところですが、まあ細かいことは気にせずいきましょう。

テンションノート(♭9th、9th、#9th、11th、#11th、♭13th、13th)は場面によって不協和音になってしまうことがあり、一般に全てのテンションがいつでも使えるわけではありません。が、ドミナントコードでは全てのテンションが使えるんです![注3][注4][注5]

個人的に特にお気に入りなのは♭9th。これを加えるとオシャレでエモいサウンドが得られます。#9thも、長3度と半音でぶつかるため非常に緊張感のある音になりますが、ここぞという場面で使うとカッコよくて好きです。

・Ⅱm7→Ⅴ7(♭9)→Ⅰ

・Ⅱm7→Ⅴ7(#9)→Ⅰ

なお、テンションノートはセブンスコードと併せて用いるのが原則ですが、9thや13thなどはセブンス抜きのadd9(アドナインス)や6(シックス)[注6]といった形でもよく用いられます。

「テンションコードって効果的な使いどころがわからなくて、結局使いこなせないんだよね~」とお悩みのアレンジャーの方は、まずはドミナントコードで使うところから徐々に慣れていくとよいかもしれません。

[注3]ただし、同音程のナチュラルテンションとオルタードテンションは同時に使用できません(メロディーがテンションになっている場合も注意)。例えば、♭9thと9thや11thと#11thといった組み合わせで同時に使用するとキモくなります。

[注4]Ⅴ7におけるナチュラル11thはアヴォイドノートとして扱われるのが一般的ですが、使用を許容する理論書も一部存在し、また私が実際にアレンジする上でも「アリ」と感じるケースを経験したため、このように言い切りました。

※ちなみに、そもそも本来アヴォイドノートとは「使ってはいけない音」ではなく「使うにあたって注意が必要な音」であり、編曲者が意図を持って使用する分にはなんら問題のないものです。しかし、特にアカペラでは通常の楽器を用いた演奏に比べて不協和を強く感じやすいこともあり、「一般的にはアヴォイドノートは扱いづらいもの」という認識を前提とした表現をしました。

[注5]ここでの「使える」というのはあくまで「和声進行を阻害しない」という意味であって、必ずしも「曲にハマる」ことを意味しません。よって実際にアレンジする上では、付加するテンションノートの与える印象が曲の雰囲気に合うかどうか、前後の流れと照らし合わせて違和感を生まないかどうかなど、感性を研ぎ澄ませて吟味する必要があります。

[注6]「add13」と書いたところで結局シックスコードと同じになってしまうので、通常そのような表記をすることはありません。

 

其ノ弐:Ⅴsus4、Ⅴ7sus4にする

CメジャーキーであればGsus4、G7sus4にするということです。
 
Ⅴ、Ⅴ7の3度を半音上げて4度にするだけの非常にシンプルなリハモですが、独特の浮遊感が出て耳を惹きます。
 
ⅤをⅤsus4にそのまま置き換えてもよいですし、Ⅴsus4→Ⅴのように解決する形で差し込んでもよいでしょう。
 
・Ⅱm7→Ⅴsus4→Ⅰ
・Ⅱm7→Ⅴsus4→Ⅴ→Ⅰ

其ノ参:Ⅳ/Ⅴにする

CメジャーキーであればF/G[注7]にするということです。
 
実はコレ其ノ弐と本質的には同じで、Ⅳ/ⅤとはすなわちⅤ7sus4(9)の5度を省略したもののことなんですね。ただ、9thが含まれている分純粋なsus4とはまた少し違った印象を与えることができます。
 
そこまでクセの強い響きにならないので使いやすく、それでいてしっかりとリハモ感を出すことができるので、個人的にとても重宝しているテクニックです。
 
・Ⅱm7→Ⅳ/Ⅴ→Ⅰ
 
[注7]「/」はオンコードであることを表しています。F/Gは、ベースがソでその上にFのコードがのっかっているコードです。
 

其ノ四:♭Ⅱ7(裏コード)にする

CメジャーキーであればD♭7にするということです。

これは正直かなりクセが強く、一気にjazzyな風が吹くのでやや使いどころを選びますが、ここぞというタイミングで使えばこの上なくオシャレなリハモです。今回の例のように、ベースがⅡ→♭Ⅱ→Ⅰと半音ずつ下降する形になるように用いられることが多いです。なおリハモにあたっては、メロディーとぶつからないかどうかはきちんと確認する必要があります(これは裏コードに限った話ではありませんが)。

・Ⅱm7→♭Ⅱ7→Ⅰ

余談ですが、もし今回の例における「Ⅰ」が「ⅠM7」であれば、私は♭Ⅱ7に13thをつけるのがお気に入りです。内声に美しいラインクリシェ(Cメジャーキーの場合であればラ(5th)→ラ#(13th)→シ(7th)の半音で動く流れ)が表れ、いい感じになります(語彙力の無さ)。ぜひ試してみてください。

・Ⅱm7→♭Ⅱ7(13)→ⅠM7

おわりに

以上、私のお気に入りのドミナントコードのリハーモナイズ手法についてお話ししてきましたが、いかがだったでしょうか。
 
これらの他にも、aug、共通するトライトーンを持つdim、モーダルインターチェンジ、アッパーストラクチャートライアドなどなど、たくさんのリハモパターンが考えられることでしょう。私もこの辺りまだまだ上手く使いこなせず勉強中ですが、意気消沈することなく日々精進していく所存です(突然韻を踏み出す)。
 
さて、明日のアカペラアドベントカレンダー23日目はくぼちささんの記事です!お楽しみに!
 
ここまで長文お付き合いいただきありがとうございました。
みなさま、よいアカペラライフを!!
 

【2019年12月23日 追記】

記事公開時、其ノ壱において「テンション”コード”を付加する」と記載しておりましたが、正しくは「テンション”ノート”を付加する」の誤りでしたので、該当箇所の表記を修正致しました。